フランス人シェフらが熱視線、日本の伝統技術「魚の生け締め」

西部ブルターニュの漁師ダニエル・ケルダビドさん(30)

【1月16日 AFP】一見したところ、両目の間に小さな穴が開いていることを別にすれば、その動かない魚は他の死んでしまった魚と同じように見える。

 だが身は格別だった。秘訣(ひけつ)は、日本に古くから伝わる「生け締め」という処理方法にある。

 日本では何世紀も前から使われてきた手法が、フランスでも採用され始めたのはつい最近のこと。同国で生け締め処理した魚を提供できるのは、西部ブルターニュの漁師ダニエル・ケルダビドさん(30)の他には、卸売業者のフランス・イケジメと、コルシカ島の漁師ダミアン・ミュラーさんだけだという。

 ブルターニュ地方の海沿いの町、サンピエールキブロンに位置し、レストラン格付け本「ミシュランガイド」で星を獲得しているレストラン、プティトテル・デュ・グランラルジュのシェフ、エルベ・ブルドンさんは、ケルダビドさんからきょうの釣果を受け取ると、「わあ、きれいじゃないか!」と感嘆の声を上げた。

 ブルドンさんは、生け締めの技術を活用することで「魚の味と食感が一変する」と高く評価している。

 ケルダビドさんは生け締めの技術を導入したことで、自分の魚に以前の倍の値段を付けることができる。タラ科のメルランなら、1キロ平均8ユーロ(約1000円)で売れる。

 ブルドンさんは「私が気にするのは質だから」と言い、値が張ってもお構いなしだ。

西部ブルターニュの漁師ダニエル・ケルダビドさん(30)

■うま味が増し、鮮度も長持ち

 ゴム長靴に防水のつなぎ姿のケルダビドさんは、夜明け前にキブロン港から漁に出る。ベリル島周辺で、メルランやその他のタラ科の魚を狙う。

 ケルダビドさんの全長9メートルの漁船は、生け締めの主な道具である手かぎの名にちなんで「ミヤビ」と命名されている。釣り上げた魚を同船上で1匹ずつ、一撃で処理していく。

 はっとさせられるような自信に満ちた手つきで、魚の両目の間に手かぎを打ち込んだかと思うと、今度はその穴から金属製のくぎを通し、動脈を切断して脳に突き刺す。その後氷水にくぐらせて血抜きする。

 こうすれば魚の脊髄を含む神経系は数秒のうちに破壊されるが、心臓は動き続ける。完全に血抜きすることで身のうま味が増すだけではなく、鮮度も長持ちする。

 残酷に見えるかもしれないが、この手法を用いる人々の話では、魚を死ぬまでのたうち回らせておくのに比べれば苦痛が少ないのだという。

 フランス人シェフの間で生け締めした魚への関心が高まる中、さらにこれを広げていきたいと考えるケルダビドさんは現在、ロブスターを生きたままゆでる代わりに生け締めにできないか検討中だという。

(c)AFP/Sandra FERRER


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